「父の惜別」と「僕の後悔」を乗り越える
母は57歳で他界した。
父は母を若くして亡くし、仕事と子育てに忙しかった母になにもしてやれなかったと悔やんだに違いない。
父はそのことに関して何も言わなかったが、供養の為に「四国八十八箇所巡り」を行脚した。
父と母は『二人で北海道にでもゆっくり回りたい』と言っていた。
僕は『行くなら早く行かないと後悔するよ』と言っていた。
結局、それは叶わなかった。
旅行会社のチラシ広告を見てそんなことをふと思った。
今の僕には、女房と旅行に行くという余裕はないが、いずれは連れて行ってやりたいと思う。娘も一緒に。
だが、それを目標に掲げるのに、ためらいがある。
父母が果たせなかったことをやってしまおうとする罪悪感のようなものが。
これを手放したい。
つまり、それを実現させることで、父母はあの世で喜んでくれる。僕らが幸せでいること。それがいちばんの供養になるんだと思いたい。